行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)。
取扱い分野:相続人の調査確定や相続手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
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被相続人の叔父や叔母は法定相続人ではありません。
なぜなら、被相続人に子や孫など直系卑属がいなければ、
被相続人の両親や祖父母などの直系尊属が相続人となり、
直系尊属が全員死亡や相続放棄、又は相続権を失っていれば、
被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者が相続人になるからです。
被相続人の叔父や叔母は、これらの法定相続人の中には含まれていません。
しかし、遺贈、養子縁組、特別縁故者の方法で、
被相続人の叔父や叔母が財産や権利を受け取ることは可能です。
また、数次相続が発生しているケースでは、結果的に、
被相続人の叔父や叔母が相続人になることもあります。
そこで、叔父や叔母は相続人になれるのかについて、
相続専門の行政書士が解説致します。
叔父や叔母の相続権
被相続人の法定相続人になれる可能性があるのは、次の1~4の人達だけです。
- 被相続人の子や孫など直系卑属(第一順位の相続人)
- 被相続人の父母や祖父母など直系尊属(第二順位の相続人)
- 被相続人の兄弟姉妹及びその代襲相続人(第三順位の相続人)
- 被相続人の配偶者(配偶者相続人)
これらの人達以外は、法定相続人にはなれません。
被相続人の叔父や叔母は、被相続人の直系尊属ではなく、
下図1のように傍系尊属ですので、法定相続人には含まれません。
被相続人の兄弟姉妹及びその代襲相続人というのは、
被相続人の甥や姪に当たる人だけなので、
やはり、被相続人の叔父や叔母は、法定相続人には含まれません。
法定相続人に含まれない以上、
被相続人の叔父や叔母に相続権はないのです。
ちなみに、被相続人のいとこも法定相続人には含まれません。
そして、法定相続人に該当する人が1人もいない場合や、
法定相続人全員が相続放棄をした場合には、
相続人不存在という扱いになります。
法定相続人に該当する人の範囲と順位については、
「法定相続人の範囲と順位をわかりやすく解説!」で、
くわしく解説しています。
叔父や叔母が被相続人の財産を受け取る方法
被相続人の叔父や叔母は、法定相続人ではありませんが、
遺贈、養子縁組、特別縁故者のいずれかにより、
被相続人の財産や権利を受け取ることは可能です。
それでは1つずつ簡単に解説していきます。
叔父や叔母への遺贈
被相続人が遺言により財産を贈与することを遺贈といいます。
遺贈は、相続人に対してもできますし、
被相続人の叔父や叔母など相続権を持たない人に対してもできます。
遺贈により被相続人の叔父や叔母が財産を受け取る場合、
被相続人が遺贈者で、財産を受け取る叔父や叔母が受遺者となります。
遺贈は、遺贈者である被相続人の一方的な意思でできるもので、
受遺者になる叔父や叔母への意思確認や通知は不要です。
叔父や叔母と養子縁組
被相続人と叔父や叔母が、生前に養子縁組を行い、
養子と養親の関係になっていれば、
法定相続人になる可能性があります。
叔父や叔母が、被相続人の養親になっていれば、
叔父や叔母としてではなく、
養親として第二順位の相続人になるからです。
上図2のように、被相続人に子供など直系卑属がいない場合や、
又は全員相続放棄した場合、若しくは相続権を失った場合は、
被相続人と養子縁組をしている叔父や叔母は、
養親として第二順位の相続人になるのです。
第二順位の相続人については、「第二順位の相続人」をご参照ください。
ちなみに、養子縁組は年齢の高い方が養親になる関係上、
叔父や叔母が、甥や姪にあたる被相続人の養子になることはできません。
叔父や叔母が特別縁故者
次の者は、申立てが認められれば、特別縁故者として、
被相続人の財産を受け取ることができると民法で定めています。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
相続人でなくても、特別縁故者になれるので、
被相続人の叔父や叔母でも、上記に該当すれば、
特別縁故者になれるということです。
特別縁故者になるには、相続人がいないことが確定してから、
3ヶ月以内に、家庭裁判所に相続財産分与の申立てをしなければなりません。
叔父や叔母が相続人になる数次相続のケース
被相続人の死亡の後で、その相続人が亡くなった場合には、
結果的に被相続人の叔父や叔母が相続人になることがあります。
たとえば、被相続人の父や母が法定相続人になっており、
被相続人の父や母以外の直系尊属は死亡していて、
被相続人に兄弟姉妹や甥姪がいないケースです。
このケースでは、法定相続人になっている父や母が亡くなれば、
その相続人は、父や母の兄弟姉妹(被相続人の叔父や叔母)になります。
被相続人の父や母の兄弟姉妹は、被相続人の叔父や叔母なので、
数次相続が発生した場合、ケースによっては、
叔父や叔母も相続人になる可能性があるということです。