行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)。
取扱い分野:相続人の調査確定や相続手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
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相続人の調査方法は、基本的に次の流れで行います。
- 被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本類を取得
- 相続人全員の戸籍謄本類を取得
- 取得した戸籍の内容を読み取り、相続人を調査して確定する
ただ、被相続人の出生から死亡まで戸籍謄本類には、
戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍という戸籍もあります。
また、被相続人に子供や孫がいる場合と、
第2順位の父母や祖父母など直系尊属が相続人になる場合、
第3順位の兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合とで、
取得すべき戸籍の範囲に大きな違いがあるのです。
そこで、実際に相続人調査の代行業務を行っている行政書士が、
相続人の調査方法についてくわしく解説致します。
この記事を閲覧することで、相続人をどうやって調査するのか、
相続順位ごとの相続人調査方法がわかります。
被相続人に子供や孫など直系卑属がいる場合の相続人調査
被相続人(亡くなった方)に子供がいる場合、
相続人の調査方法としては、具体的に次の流れになります。
まず、被相続人の最後の戸籍の本籍地を地番まで正確に把握して、
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を役所ですべて取得します。
ただ、最後の戸籍の本籍地は、
最後の住所とは意味が違います。
戸籍の本籍地とは、戸籍の住所地のことで、
被相続人が実際に住んでいた所とは意味が違うからです。
もし、最後の戸籍の本籍地がわからない場合には、
被相続人の最後の住民票を役所から発行してもらえば、
最後の戸籍の本籍地がわかります。
ただし、役所から被相続人の住民票を発行してもらうときには、
本籍地と筆頭者入りで発行してもらうことが必要です。
なぜなら、普通に住民票を発行してもらっても、
通常、本籍地と筆頭者入りではない住民票が発行されるからです。
また、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等というのは、
いくつかの除籍謄本(じょせきとうほん)や原戸籍(はらこせき)も含まれます。
被相続人の転籍、婚姻(または離婚)、法改正などによって、
除籍謄本や原戸籍はそれぞれいくつか存在していますので、
被相続人の出生から死亡まで抜かりなく全て取得しなければなりません。
もし、被相続人の財産に不動産がある場合には、
できれば、被相続人の戸籍の附票も取得しておくと良いです。
戸籍の附票には、被相続人の過去の住所が載っているため、
不動産の相続手続き時には、必要になることがよくあるからです。
被相続人の戸籍の附票は、
被相続人の戸籍謄本等を取得するときに一緒に取得できますので、
取得に手間はかかりません。
ただ、役所に提出する戸籍謄本等の請求用紙に、
必要な戸籍として、戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍だけでなく、
戸籍の附票にもチェックを入れて役所に請求する必要があります。
次に、婚姻や分籍(籍を分けること)によって被相続人の戸籍から出ている子供がいれば、
戸籍の本籍地と筆頭者を調べてから、子供の戸籍謄本等を取得します。
もし、被相続人の子供の戸籍の本籍地と筆頭者が不明の場合は、
被相続人の出生から死亡の戸籍謄本等の中で、子供の記載事項欄に、
転籍先の本籍地と筆頭者が記載されているので確認できます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と子供全員の戸籍謄本等がそろえば、
1つ1つ戸籍の内容を確認して、
被相続人に他に子供がいないかどうかを確認します。
被相続人の配偶者(夫又は妻)がいる場合でも、配偶者がいない場合でも、
子供として認知している場合や、養子縁組をして養子にしている場合がありますので、
特に、被相続人の戸籍の記載欄は隅から隅まで確認しておくことが重要です。
戸籍上、被相続人が子供として認知していれば、
非嫡出子(ひちゃくしゅつし:婚姻外の子供)となりますが、
被相続人の子供であることに違いはないので、実子と同じく相続人になります。
戸籍上、養子縁組をして養子にしている場合も、
被相続人の実子と同じく相続人です。
被相続人の子供に未成年者や胎児(母親の体内にいる子)がいても、
子供であることに違いはないので、相続人となります。
ただし、胎児の場合、生まれていない段階では戸籍謄本等に記載がありませんが、
無事に生まれた段階で戸籍に記載され、相続人になるのです。
また、被相続人に配偶者(夫又は妻)がいる場合は、
被相続人の最後の戸籍謄本に配偶者も一緒に記載されています。
被相続人の配偶者は常に相続人となり、
被相続人の最後の戸籍謄本は、
相続人である配偶者の戸籍謄本を兼ねることになります。
以上のように、被相続人に子供がいる場合の相続人の調査をするには、
次の全ての戸籍謄本等が必要になるということです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(除籍謄本や原戸籍含む)
- 子供全員の戸籍謄本
そして、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の記載内容から、
被相続人の子供全員を確認できれば、
相続人の調査は完了となり相続人が確定されるのです。
その後、相続人全員で相続方法について話し合いがまとまれば、
被相続人の財産(銀行預金や保険金、株や不動産)の相続手続き書類を作成して、
そろえた戸籍謄本等も一緒に相続手続き先に提出して、相続手続きを行います。
すでに亡くなっている子供がいたら、
その子供に子(被相続人の孫)がいるかどうかによって、
相続人に違いがあります。
もし、亡くなっている子供に子(被相続人の孫)がいれば、
亡くなっている子供の代わりにその子が相続人になります。
代襲相続と呼ばれる相続です。
亡くなっている子供に子(被相続人の孫)が複数人いれば、
その子達全員(被相続人の孫)が代わりに相続人になるのです。
代襲相続によって被相続人の孫が相続人になる場合には、
次の戸籍謄本等が相続人の調査に必要となります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(除籍謄本や原戸籍含む
- 子供全員の戸籍謄本
- すでに亡くなっている子供の出生から死亡までの戸籍謄本等(除籍謄本や原戸籍含む
- すでに亡くなっている子供の代わりに相続人になる孫の戸籍謄本
なお、上記の戸籍謄本等で、重複する戸籍(同じ戸籍)については、
1つあればOKです。
すでに亡くなっている子供の出生から死亡までの戸籍謄本等は、
すでに亡くなっている子供の子(被相続人の孫)を全員確認するために必要となるのです。
逆に、亡くなっている子供に子(被相続人の孫)がいなければ、
代わりに相続人になる人はいませんが、次の戸籍が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(除籍謄本や原戸籍含む
- 子供全員の戸籍謄本
- すでに亡くなっている子供の出生から死亡までの戸籍謄本等(除籍謄本や原戸籍含む
上記の戸籍についても、重複する戸籍謄本等(同じ戸籍)については、
1つあればOKです。
第2順位の父母や祖父母など直系尊属が相続人になる場合の相続人調査
被相続人(亡くなった方)に子供がいなくて、
直系尊属(父母又は祖父母)が生きてる場合、
相続人の調査方法としては次の流れになります。
まず、被相続人の最後の戸籍の本籍地を地番まで正確に把握して、
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を役所ですべて取得します。
被相続人が婚姻や分籍(籍を分けること)をしていない場合は、
被相続人は父母と同じ戸籍の中にいます。
なお、戸籍謄本等を取得するときには、
役所に提出する「戸籍謄本等の請求用紙」に、
取得したい戸籍の本籍地と筆頭者などの記入が必要です。
その際、戸籍の本籍地については市町村だけでなく、
地番まで正確に記入する必要があり、
戸籍の筆頭者には父親がなっていることが多いです。
もし、戸籍の本籍地や筆頭者が正確にわからない場合には、
被相続人の最後の住民票を役所で取得するとわかります。
ただ、住民票を取得する際には、
役所に提出する「住民票の請求用紙」に、
本籍地と筆頭者入りの住民票を希望の旨を記入しておかなければなりません。
なぜなら、普通に住民票を取得しても、
通常、戸籍の本籍地と筆頭者は記載されないからです。
そして、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を役所から取得できれば、
取得した戸籍の被相続人の戸籍事項欄を1つ1つ読んで、
戸籍上、子供がいないことを確認します。
被相続人が婚姻をしていなくても、認知している子供がいたり、
養子縁組をして養子がいる場合もありますので、
被相続人の戸籍事項欄については隅々まで確認しておくことが必要です。
そして、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等の内容から、
子供がいないことが確認できれば、次に、生きている父母の戸籍謄本を取得します。
もし、父親のみ生きていれば、父親の戸籍謄本を取得し、
母親のみ生きていれば、母親の戸籍謄本を取得するわけです。
ただし、被相続人の最後の戸籍謄本(又は除籍謄本)が、
生きている父母の現在の戸籍謄本と同じであれば、
その戸籍があれば良いということになります。
しかし、被相続人の父母が離婚をしていて、
現在の戸籍謄本が被相続人の最後の戸籍謄本(又は除籍謄本)と違う場合は、
生きている父母の現在の戸籍謄本を役所で取得するということです。
なお、父母の現在の戸籍謄本を取得する際には、
戸籍の本籍地と筆頭者を明確にしておく必要があります。
もし、父母の戸籍の本籍地と筆頭者がわからない場合には、
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の内、父母の記載事項欄を見れば、
父母の戸籍の本籍地と筆頭者がわかります。
また、被相続人に配偶者(夫又は妻)がいる場合は、
被相続人の最後の戸籍謄本(又は除籍謄本)に配偶者も一緒に記載されています。
そして、被相続人の配偶者は常に相続人となり、
被相続人の最後の戸籍謄本(又は除籍謄本)は、
相続人である配偶者の戸籍謄本を兼ねることになります。
以上の流れで、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等から、
子供がいないことを確認できて、
生きている直系尊属(父母、父母が死亡なら祖父母)の戸籍謄本を取得すれば、
相続人の調査は完了となり相続人が確定されるのです。
そして、相続人全員で相続方法について話し合いがまとまれば、
被相続人の財産(銀行預金や保険金、株や不動産)の相続手続き書類を作成して、
そろえた戸籍謄本等も一緒に相続手続き先に提出して、相続手続きを行います。
被相続人の父母がどちらもすでに亡くなっていて、
被相続人の祖父母の両方、又は、祖父母のどちらかが生きていれば、
生きている祖父母が相続人になります。
そのため、死亡の記載がされている父母の戸籍謄本等と、
生きている祖父母の戸籍謄本を役所で取得する必要があります。
なぜなら、戸籍上、被相続人の父母の死亡を確認できないと、
被相続人の祖父母は相続人にはなれないからです。
つまり、被相続人に子供がいなくて、父母も死亡していて、
生きている祖父母がいる場合、
相続人を調査するには次の全ての戸籍謄本等が必要になるということです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 死亡の記載がされている父母の戸籍謄本等
- 生きている祖父母の戸籍謄本
上記の戸籍謄本等は、相続人の調査に必要なだけでなく、
被相続人の財産(銀行預金や不動産など)の相続手続きの際にも、
各相続手続き先から提出を求められる書類です。
第3順位(兄弟姉妹や甥姪)の相続人調査
被相続人(亡くなった方)に子供がいなくて、
直系尊属(父母又は祖父母)も全員亡くなっており、
兄弟姉妹又は甥姪がいる場合の相続人の調査方法としては、
次の2つの方法があります。
まず、被相続人の最後の戸籍謄本(又は除籍謄本)を役所で取得して、
取得した戸籍謄本等からその前の戸籍謄本等の本籍と筆頭者を読みとり、
順々に出生時の戸籍謄本等までさかのぼって取得していく方法です。
取得した被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の記載内容から、
子供が1人もいないことを確認します。
その後、被相続人の父母の戸籍謄本等をすべて取得して、
被相続人の兄弟姉妹の戸籍謄本等を取得していくことになります。
つまり、被相続人の戸籍謄本等⇒父母の戸籍謄本等
⇒兄弟姉妹の戸籍謄本等の順番で取得していく方法です。
ただ、この方法で進める場合、
被相続人の最後の戸籍の本籍地と筆頭者を最初に知っていることと、
被相続人と自分とのつながりを証明できる戸籍が必要になります。
なぜなら、被相続人の戸籍謄本等を役所で取得する際には、
「戸籍謄本等請求用紙」に、
被相続人の本籍地と筆頭者などを正確に記入する必要があるからです。
そして、被相続人と自分とのつながりを証明する戸籍のコピーを、
「戸籍謄本等請求用紙」の添付書類として、
役所の窓口に提出する必要があるからです。
しかし、相続人が兄弟姉妹やおいめいの場合、
被相続人の戸籍の本籍地や筆頭者がわからないことも多いです。
さらに、被相続人と自分とのつながりを証明できる戸籍も、
最初は手元にないことがほとんどです。
そこで、もう1つの方法としては、
先に、自分(被相続人から見て兄弟姉妹)の戸籍謄本等と、
父母の戸籍謄本等をすべて取得して行く方法があります。
父母の戸籍謄本等をすべて取得できれば、
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等が取得しやすくなります。
なぜなら、被相続人が婚姻していなければ、
父母と同じ戸籍の中にいるからです。
もし、被相続人が婚姻していれば、
新しく作った被相続人の戸籍の本籍地と筆頭者が、
父母の戸籍謄本等の中に記載されているからです。
つまり、自分(被相続人から見て兄弟姉妹)の戸籍謄本等
⇒父母の戸籍謄本等⇒被相続人の戸籍謄本等という順番で、
取得していく方法となります。
上記のように、戸籍謄本等を取得していく順番は2通りありますが、
兄弟姉妹が相続人になる場合には、
少なくとも次の戸籍謄本等を取得する必要があるのです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 被相続人の兄弟姉妹の戸籍謄本等