行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)。
取扱い分野:相続人の調査確定や相続手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を行っています。
行政書士のプロフィールはこちら
- 「被相続人とは誰のこと?」
- 「被相続人の意味がよく分からない」
- 「相続人と被相続人の違いは?」
被相続人(ひそうぞくにん)について、
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、被相続人とは誰のことなのか、
被相続人の意味と、相続人との違いについて、
相続人の調査業務を行っている行政書士がわかりやすく解説致します。
この記事を閲覧することで、
被相続人について知りたいことが分かります。
被相続人とは誰のこと?
被相続人とは、亡くなった人の内、
財産や権利などを相続される人のことです。
人は、亡くなった瞬間から被相続人となり、
亡くなった人の財産や権利を引き継ぐ親族は、
相続人となります。
なぜなら、人が死亡した時点で、相続が自動的に発生し、
その相続人が権利と義務の一切を引き継ぐことを、
民法882条で定めているからです。
民法第八百八十二条
相続は、死亡によって開始する。
引用元: 民法 | e-Gov法令検索. 「第八百八十二条」. (参照 2023-6-16)
相続というのは、故人が所有していた財産や権利を、
法律で定められた相続人が引き継ぐことです。
そのため、人は死亡した時点で、被相続人となり、
死亡によってその人の財産や権利が、
相続人に自動的に移るのです。
音信不通など7年以上生死が不明で、
家庭裁判所の裁判官から失踪宣告を受けた人の場合も、
死亡したとみなされて、相続が開始します。
つまり、人の死亡による被相続人から相続人への財産や権利の移動は、
被相続人と相続人の両方の意思に関係なく起こるのです。
たとえば、夫と妻がいて、
夫が亡くなれば、その時点で夫は被相続人となり、
妻は相続人となります。
逆に、妻が亡くなれば、その時点で妻が被相続人となり、
夫は相続人になるのです。
ただ、人の死亡によって、被相続人の財産や権利が、
その相続人に自動的に移りますが、
その時点では、預貯金や不動産などは被相続人名義のままです。
そのため、実際に被相続人名義の財産を、
相続人が自由に使えるようにするためには、
相続人への名義変更などの相続手続きを行う必要があります。
なお、遺言を残す方法によって、
誰に財産や権利を相続させるのかなど、
被相続人の意思を反映させることは可能です。
被相続人の意味
被相続人の被の意味は、被害者などの被と同じで、
かぶる や されるという受け身の意味があります。
そのため、被相続人は、相続される人という意味になります。
逆に、亡くなった人の財産や権利を受け継ぐ人のことは、
相続する人という意味で、相続人です。
つまり、相続される人が被相続人で、
相続する人が相続人ということなのです。
被相続人とは具体的に誰のこと?
被相続人というのは死亡した人のことですが、
誰の財産や権利についての相続なのかという視点によって、
被相続人になる人が違ってくることに注意が必要です。
どういうことかと言えば、
たとえば、父と母がどちらも亡くなっている場合、
通常、その子供が相続人になります。
そして、亡くなっている父の財産についての相続では、
父が被相続人となり、その子供が相続人となります。
しかし、亡くなっている母の財産についての相続では、
母が被相続人となり、その子供が相続人になるのです。
つまり、被相続人とは、死亡した人のことですが、
誰の財産や権利についての相続なのかという視点によって、
被相続人が誰なのかが決まってくるわけです。
たとえば、子や孫のいない亡おじ又は亡おばの財産の相続なら、
亡おじ又は亡おばが被相続人となります。
子や孫のいない亡兄又は亡弟、姉妹の財産の相続なら、
亡兄弟姉妹が被相続人となるわけです。
相続人と被相続人の違い
相続人と被相続人の違いは、
相続する側の人、相続される側の人という違いです。
故人の財産や権利を受け継ぐ人は、
相続する人という意味で相続人と呼び、
財産や権利を受け継がれる人は、
相続される人という意味で被相続人となります。
そして、財産や権利を受け継がれる被相続人は1人ですが、
財産や権利を受け継ぐ相続人は、相続順位のある血族相続人と、
常に相続人になる配偶者がいるのです。
なお、相続人の範囲と順位については、
「法定相続人の範囲と順位をわかりやすく解説!」で、
くわしく解説しています。
被相続人が死亡後に相続人が死亡した場合の被相続人
被相続人の死亡後に、その相続人が亡くなった場合には、
被相続人が複数発生することになります。
なぜなら、被相続人が死亡後に相続人が亡くなれば、
亡くなった相続人も2番目の被相続人になるからです。
そして、2番目の被相続人の相続人が、
最初の被相続人の相続人に加わってくるのです。
このことを、数次相続(すうじそうぞく)と呼んでいます。
最初の相続を済ませる前に相続人が亡くなっていくと、
新たな相続が次々に増えていくため、
数次相続と呼ばれているのです。
たとえば、数次相続が発生している場合の遺産分割協議書では、
被相続人の表示だけでなく、被相続人の次に死亡した相続人を、
「相続人兼被相続人」として、最後の本籍や最後の住所、
生年月日や死亡年月日が記載されます。