『出生から死亡までの戸籍謄本の見本を見てみたい』
『出生から死亡までの戸籍謄本の見方が知りたい』
『戸籍がどこからどこまでのものなのかよく分からなくて』
とお困りの方も多いのではないでしょうか?
そこで、出生から死亡までの戸籍謄本の見本と見方について、
相続人の調査確定業務を行っている行政書士が、
見るべきコツも含めて、具体的にわかりやすく解説いたします。
この記事では、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が、
どのような書類で、どこを見れば良いのかが同時にわかります。
出生から死亡までの戸籍謄本の見本と見方
出生から死亡までの戸籍謄本というのは、
若くして亡くなった方以外は、戸籍謄本だけでなく、
複数の除籍謄本や改製原戸籍謄本からなります。
ただ、出生から死亡までの戸籍謄本の見方は、
実際に戸籍の見本を見ていただくのが一番わかりやすいです。
そこで、被相続人山田昭和(仮名)の出生から死亡までの戸籍を、
亡くなった時の戸籍から生まれた時の戸籍までさかのぼる形で、
1つ1つ戸籍の見本を見ていただければと思います。
死亡時の戸籍の見本と見方
まず、下図1は、被相続人山田昭和が亡くなった時の戸籍の見本になります。
上図1のような平成6年式の横書き戸籍で見るべき所は、
①の戸籍事項欄に記載されている改製日と、
②の亡くなった人の身分事項欄に記載されている死亡日です。
改製日というのは、法令による改製によって、
この戸籍が作製された年月日という意味です。
つまり、上図1の戸籍は、被相続人山田昭和にとって、
この戸籍が作製された平成13年5月10日から、
令和5年1月15日の死亡までの戸籍ということになります。
そのため、この戸籍謄本1つだけでは、
被相続人山田昭和の出生から死亡までの戸籍とは言えず、
この戸籍よりも前の戸籍が存在することがわかります。
死亡時の戸籍より1つ前の戸籍の見本と見方
次に、下図2の戸籍は、被相続人山田昭和にとって、
上図1の戸籍よりも1つ前の戸籍になります。
(※下記画像をクリックすると拡大できます)
この昭和23年式の改製原戸籍で見るべき所は、
冒頭①部分の戸籍事項欄と、
②部分の平成6年法務省令の改製による消除日です。
まず、冒頭①部分の戸籍事項欄を見ると、
「平成9年10月1日神奈川県横浜市南区・・から転籍」
という記載があり、転籍時にこの戸籍が作られたという意味です。
そして、②部分には「平成6年法務省令・・・による改製につき
平成13年5月10日に消除」と記載されています。
この意味は、平成6年法務省令による改製によって、
平成13年5月10日に戸籍が作り替えられて、
この戸籍が除かれたという意味です。
作り替えられた戸籍というのは、上図1の戸籍のことです。
つまり、上図2の改製原戸籍は、被相続人山田昭和にとって、
平成9年10月1日に横浜市から転籍して来て作られた戸籍で、
図1の戸籍に作り替えられる平成13年5月10日までの戸籍ということになります。
そのため、転籍前の横浜市での戸籍が、存在することになります。
婚姻時から転籍までの戸籍の見本と見方
下図3の戸籍は、被相続人山田昭和の横浜市での戸籍です。
(※下記画像はクリックすると拡大できます)
この昭和23年式の縦書きの除籍で見るべき所は、
①②の冒頭部分と、③の亡くなった人の身分事項欄です。
まず、上図3の①の冒頭部分を見ると、
昭和28年4月1日編製という記載があるので、
その時にこの戸籍が作られたという意味になります。
そして、どういった経緯でこの戸籍が作られたかは、
③の身分事項欄を見れば、山田花子との婚姻によって、
東京市の本籍から入籍したことがわかります。
次に、②の冒頭部分を見ると、
平成9年10月1日に千葉市の本籍に転籍して、
この戸籍が消除されたことがわかるのです。
つまり、上図3の除籍は、被相続人山田昭和にとって、
昭和28年4月1日の婚姻によって作られた戸籍で、
千葉市に転籍する平成9年10月1日までの戸籍ということになります。
そのため、昭和28年4月1日の婚姻より前の戸籍が、
存在することになります。
婚姻前の戸籍の見本と見方
下図4の戸籍は、被相続人山田昭和の婚姻前の戸籍です。
(※下記画像はクリックすると拡大できます)
上図4のような戸主の記載があり、
大正4年式の改製原戸籍で見るべき所は、
①の戸主の戸籍事項欄と、②の亡くなった人の戸籍事項欄です。
まず、①の戸主の戸籍事項欄を見ると、
「昭和12年2月1日に前戸主死亡により家督相続」という記載があります。
家督相続というのは、一家の戸主の地位と権利・義務を引き継ぐ事です。
そのため、上図4の例で言えば、前戸主 山田明治の死亡により、
長男の山田大正が家督相続で新たな戸主となり、
この戸籍が作製されたという意味になります。
次に、②の被相続人山田昭和の戸籍事項欄を見ると、
昭和28年4月1日の婚姻によって横浜市に新戸籍を作り、
この戸籍から除籍したことがわかります。
除籍というのは、婚姻、離婚、分家、死亡などによって、
戸籍から出るという意味です。
つまり、上図4の改製原戸籍は、被相続人山田昭和にとって、
家督相続によって、この戸籍が作製された昭和12年2月1日から、
婚姻により横浜市に転籍する昭和28年4月1日までの戸籍ということになります。
ただ、被相続人山田昭和は昭和8年生まれなので、
昭和8年の出生から昭和12年2月1日までの戸籍が、
他に存在することになります。
出生時の戸籍の見本と見方
下図5の戸籍は、被相続人山田昭和の出生時の戸籍です。
(※下記画像はクリックすると拡大できます)
このような戸主の記載がある明治31年式の除籍で見るべき所は、
①の「戸主と為りたる原因及び年月日欄」と、
②の戸主の戸籍事項欄、被相続人山田昭和の戸籍事項欄です。
まず、上図5の①部分を見ると、前戸主の死亡により、
明治44年7月8日に山田明治が戸主になったことで、
この戸籍が作製されたことがわかります。
次に、②部分の戸主の戸籍事項欄を見ると、
昭和12年2月1日の家督相続により新たな戸籍が作製され、
この戸籍が抹消されたことがわかります。
そして、③部分の被相続人山田昭和の戸籍事項欄を見ると、
昭和8年9月1日に生まれて、
同月2日に父の届出でこの戸籍に入籍しています。
つまり、上図5の除籍は、被相続人山田昭和にとって、
昭和8年9月1日の出生から、
この戸籍が抹消される昭和12年2月1日までの戸籍ということです。
以上の上図1~上図5の連続したすべての戸籍が、
被相続人山田昭和の出生から死亡までの戸籍謄本ということになります。
出生から死亡までの連続した戸籍謄本の見方のコツ
出生から死亡までの連続した戸籍は、
生前に婚姻や離婚、転籍などの多かった人ほど、
戸籍の数がその分多くなりますが、
見方のコツをつかめば、正確に判断できるようになります。
そのためには、出生から死亡までの戸籍謄本を見る際に、
1つ1つその戸籍がいつ作られていつ除かれたのか、
人がその戸籍内にいつ入って、いつ出たのかを見極めるのがコツです。
具体的には、それぞれ次の文言に注目して見極めます。
戸籍が作られた際の文言と除かれた際の文言
戸籍が作られた際の文言としては、
編製、戸籍改製、転籍、家督相続、戸主となるの5つがあり、
それぞれ次のような意味があります。
- 本戸籍編製または編製・・・婚姻などを原因とした新戸籍の編製。
- 戸籍改製・・・法令により新戸籍に改製。
- ~から転籍・・・本籍地の変更による新戸籍の編製。
- 家督相続・・・家督相続を原因とした新戸籍の編製。
- 戸主となる・・・前戸主の死亡や隠居による新戸籍の編製。
逆に、戸籍自体が除かれた際の文言としては、
本戸籍消除または消除などがあり、
それぞれ次のような意味があります。
- 本戸籍消除又は消除・・・転籍や法令改正等により戸籍が除かれたということ。
人がその戸籍に入った時と出た時の文言
人がその戸籍に入った時の文言としては、
入籍などがあり、次のような意味があります。
- 入籍・・・その戸籍に入ったということ。
ただし、入籍の場合は、その日付に注意が必要です。
なぜなら、その戸籍が作られた年月日よりも前の日付の場合、
その戸籍よりも前の戸籍の記載が、
そのまま載っているということになるからです。
逆に、人がその戸籍から出る時の文言としては、
除籍、死亡などがあり、次のような意味があります。
- 除籍・・・婚姻、離婚、分家、死亡などで戸籍から除かれること。
- 死亡・・・死亡により戸籍から除かれること。
1つ1つの戸籍を見る際に、上記の文言に注意してよく見れば、
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本を、
何通あったとしても、正確にそろえることができるようになります。
ただ、伯父・伯父や伯母・叔母の相続では、
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本だけでなく、
被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本、
被相続人の亡兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本など、
かなり広範囲の戸籍が必要になる点には注意が必要です。
父が亡くなって相続のために出生から死亡までの戸籍謄本を広域交付を使って取得したのですが、役所の方の勘違いにより取得した謄本だけでは父の出生まで遡れていないことにこの記事を読んだことで気づけました。
わかりやすく大変参考になる記事を公開してくださったことに感謝いたします。ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
にしむらさんのお役に立てて良かったです(^^
この記事を作った甲斐がありました! 行政書士寺岡孝幸